名古屋市立大学大学院薬学研究科・薬学部English SAMPLE COMPANY
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トリプルネガティブ乳がんの予後を診断できるENPP1蛍光プローブの開発

生物は酵素反応を巧みに利用することとで生体の恒常性を維持していますが、異常な酵素反応は様々な疾患の発症に繋がることが知られています。ENPP1は細胞外のATPを加水分解する酵素であり、細胞外のリン酸量を調節することで骨の恒常性を制御することが知られています。しかし、乳がんを始めとする幾つかのがんでENPP1が過剰発現することも近年明らかにされ、乳がん患者の生存期間と負の相関が見られることも示されています。従って、ENPP1活性を簡便に測定することができれば乳がん患者の予後診断に応用できる可能性があります。また、ENPP1の阻害剤は新たな作用機序を持つ抗がん剤になる可能性もあります。
我々は、ENPP1活性を高感度に検出できる蛍光プローブTG-mAMPを設計・合成し、それを用いてまず阻害剤スクリーニングを行いました。得られた阻害剤候補の構造を最適化することによりnMオーダーの阻害活性を持つ阻害剤の創製に成功しました。また、TG-mAMPはENPP1を発現するがん細胞株を用いた生細胞イメージングに応用できるだけでなく、乳がん患者由来の組織を用いてもENPP1活性を高感度に検出することが可能でした。さらに、名古屋市立大学病院の遠山竜也先生との共同研究にてENPP1発現と生存期間との相関を調べたところ、特にトリプルネガティブ乳がん患者においてENPP1発現と予後との間に負の相関が認められました。以上の結果から、TG-mAMPは乳がん患者の迅速な予後診断に応用できることが示されました。

[発表論文]
J. Med. Chem., 62, 9254-9269 (2019).

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